21世紀の大学像と今後の改革方策について(答申)−競争的環境の中で個性が輝く大学−
      第2章 大学の個性化を目指す改革方策
      2 教育研究システムの柔構造化 ―大学の自律性の確保―
      (1)多様な学習需要に対応する柔軟化・弾力化―学生の主体的学習意欲とその成果の積極的評価―
      2)大学院段階

    i) 修士課程1年制コースの制度化


       社会人の大学院修士課程への積極的な受入れを図っていくため,各大学の選択により,通常の教育方法に加え週末や夏休み期間中などにおいて集中して授業又は研究指導を行うなどの履修形態の工夫や,一定の職業経験の成果を生かした特定課題研究・修士論文の作成の指導などのカリキュラムの工夫により,1年以上2年未満の修業年限でも修了することが可能なコースを設けることができるような仕組みを導入し,大学院で高度な知識・能力を身に付け社会の各分野で指導的な役割を担う人材の養成に資することが必要である。
       その際,導入の趣旨から,社会人を対象とすることを原則とすること,及び現行の修士の学位を授与するにふさわしい水準を確保することが必要である。 


       (ア)大学院における社会人受入れのための制度の現状等

      (a) 大学院においては,社会人の積極的な受入れを進めるため,社会人を対象とした特別選抜制度の導入,科目等履修生制度の活用,昼夜開講制の採用や夜間大学院の設置など,様々な取組が行われている。

      (b) また,職業を持つ社会人の通学を考えた場合,自宅や職場から通える範囲に必ずしも希望する大学院がないといったことや,職場環境等によって通学可能な時間帯が限られることなど,地理的・時間的制約等から大学院レベルの学習を希望しながらも実現が困難な社会人等の学習需要により適切にこたえていくため,平成10年3月に通信制の大学院の制度が創設された。

      (c) 現行制度においては,修士課程の修業年限は標準2年とされ,優れた業績をあげた者については最短1年で修了することも認め得ることとされている。

       (イ)修士課程1年制コースについての社会的要請

      (a) 文部省が平成9年度に行った「生涯学習活動の促進のための大学院制度の弾力化に関する調査研究」のうち企業の人事担当責任者に対するアンケート調査の結果によれば,1年制修士課程の必要性については,回答企業の71.8%が「必要である」又は「ある程度必要である」と答えている。また,1年制の修士課程は特定の専門分野に限るべきかとの設問に対しては,限るべきであると回答した企業はわずか2%にすぎず,おのずと限定されるという企業を加えても全体の20%に満たないという結果が出ている。

      (b) 大学院に対するこのような社会的要請を踏まえ期待にこたえていくためには,とりわけ,職業を持つ社会人のリフレッシュ教育を推進することが重要である。そのためには,勤務の都合や通学の便宜など社会人の多様な状況に柔軟に対応し得る体制を整備するとともに,修業年限についても弾力化を図ることが必要である。

       (ウ)修士課程1年制コースの制度化
       社会人の大学院修士課程への積極的な受入れを図っていくため,今後は,各大学の選択により,社会人の再学習などの実際の需要に応じ通常の教育方法に加え週末や夏休み期間中などにおいて集中して授業又は研究指導を行うなどの履修形態の工夫や,一定の職業経験等の成果を生かした特定課題研究・修士論文の作成の指導などのカリキュラムの工夫により,1年以上2年未満の修業年限でも修了することが可能なコースを設けることができるような仕組みを導入し,大学院で高度な知識・能力を身に付け社会の各分野で指導的な役割を担う人材の養成に資することが必要である。
       その際,導入の趣旨から,社会人を対象とすることを原則とすること,及び現行の修士の学位を授与するにふさわしい水準を確保することが必要であり,教員数の増などこれを実施するための研究指導体制,教育環境の整備を求めたい。